twitterでお世話になっている桜部さく先生のデビュー作です。
桜部先生、デビューおめでとうございます!
以下感想を畳んでおきます。
王国! ファンタジー! 人質! となるとなんとなく陰謀の匂いがする話を予想してしまいますが、この話には、悪人が出てきません。
幼い妹を、東の国を守るために自ら人質に選ばれようとしたカナギが、北の国で風貌の違いを差別されることもなく、お偉いさんの寵愛を受けるのに嫉妬されいじめられることもなく、お相手以外の悪人に犯されるようなこともありません。
私の読んだファンタジーBLは多くはないんですが、だいたい悪人にレイプ(未遂含む)される話ばかりなんですよね。(どんな偏った読書遍歴だ)(だいたい矢城先生のせい)
ただただ、不器用に恋心を表現し、カナギの心を測り間違えたサスナと自分はあくまでも人質であるという立場に自覚的に振る舞ったカナギがすれ違ってしまっただけで、北の国の国王も悪くない、王妃様も悪くない、サスナの兄も悪くない、優しいラブストーリーだったなあ、と。
冒頭30ページで私は泣いてました。年々涙腺が弱くなって困るのですが(いや、昔から物語を読んでは泣いてばかりいるんですが)、カナギが家族に罪悪感を背負わせるまいと泣かないようにしているのがたまらなく健気です。
何がいいって、「人質であるから、サスナの欲の捌け口にされたって構わない」と耐えていたカナギが、サスナと想いが通じ合ったあとのラブシーンでは、自分から積極的に彼を受け入れようとするのが萌えでした。
お互いにとって人生最後の恋愛であろう二人のラストシーンも、きれいで、今後の幸せを祈らずにはいられないエンディングでした。面白くて一気に読んでしまった。
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