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    愛情いっぱいハニー~やすおとちーちゃん~

    6話前に読んでほしいss。


    時間軸的には本編前。本編が靖男視点で進むので、こっちのssはちーちゃん視点で基本的には書いていきたいな、と思っています。





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    リビングには死体が三匹。うちを溜まり場にするのは別に構わない。大学からも近いし、ファミリー向け物件で広いから。でも本当にうちにやってきて、お酒を飲んで(俺は体質的に飲めないということが、入学時に受けてみたパッチテストによって判明しているし、一度舐めてみただけでげーげー吐いちゃってダメだった。たぶん一杯飲んだら死ぬと思う)エッチなDVDを見てぐだぐだしているだけで、誰も俺のことは顧みない。
    それでもいいんだけど。深入りされて、秘密がばれたら困るから。それなら表面的な付き合いだけで全然構わないんだけれど、それでもやっぱり、ここまで単純に飲み会会場、そして寝てても怒られない場所としか認知されていないのは悲しいことだ。
    溜息をついて一人で後始末をしていると、死体だと思っていた一匹が、ふらふらとキッチンへと現れた。俺よりも20センチ弱低い身長。俺が規格外のでかさだということを差し引いても、同世代の平均身長に満たない。
    「神崎。どうしたの? 具合、悪い? 水飲む?」
    顔色を見ると少し赤くなっている程度で、青くなったり白くなったりということはないから急性アルコール中毒というわけではなさそうだけれど。
    「水はもらうけど、片付け手伝おうと思って」
    神崎に水の入ったグラスを渡すと、一気に飲み干した。
    「いいよ、寝てて。全然」
    「うーん……でも場所貸してもらって、それで片付けも全部やらせるのはどうかと思うんだよね、俺は」
    律儀だな、と思う。神崎は気配りのできる男だ。いつも輪の中心にいるけれど、外側にいる俺にもいつも目を向けて、こうして手を差し伸べてくれる。いい奴だなぁ、と思う。
    「別に気にしなくていいのに。俺だって楽しんだんだし」
    言いながら皿を拭いていると、拭き終わった皿を神崎が「ん」と手を出すので、少しためらったけれど、渡して、しまってもらった。
    「割り勘っていうけどさぁ。お前飲まないじゃん。損してるよ、絶対」
    「そうかな?」
    うん、絶対、と力強く神崎は言った。
    皿をしまった神崎は、「これなに?」と食器棚の中からひとつの器具を取り出した。棒の先端にぎざぎざのついたボールがついている。
    「ああ、それ。はちみつ用のスプーン」
    「はちみつ……スプーン?」
    食料の保存をしている棚の中からはちみつの瓶を取り出す。神崎からはちみつスプーンを受け取って、瓶の中に入れる。
    「普通のスプーンだとだらだら垂れちゃうんだけど、これだとこのまま紅茶とかに入れられて便利なんだ」
    舐める? と聞くと神崎は首を横に振った。じゃあ俺が舐めちゃおう。甘い味が口の中いっぱいに広がる。
    「男の一人暮らしではちみつなんて買う?」
    「あ~……心配した、母さんが」
    はちみつがあれば健康に役立つわよ、と言って定期的に実家から、どこかの養蜂場から取り寄せたちょっとお高いはちみつを送ってくる。唇や手に塗ると荒れるのを防ぐことができるし、喉の痛みもケアできるから、なんだかんだ使っている。
    「ふーん。家族の愛情ってやつがここには詰まってんだな」
    やっぱり俺にも一口ちょうだい、と神崎は、まだスプーンに残っていたはちみつを吸った。
    「あま」
    家族の愛の味だなんて、俺は考え付かなかったから、やっぱり神崎は素敵な男なのだと思った。たぶん、この調子で女の子にも接しているからもてるんだろうな。うらやましいというよりも、すごいなあ、とただただ感嘆するばかりだった。






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